選分えりわ)” の例文
そこで、大好きな田圃の中でも、選分えりわけて、あの、ちょろちょろ川が嬉しい。雨上あまあがりにちっと水がえて、畔へかかった処が無類で。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父なる人は折しものこぎりや、鎌や、唐瓜たうなすや、糸屑などの無茶苦茶にちらばつて居る縁側に後向に坐つて、頻りに野菜の種を選分えりわけて居るが、自分を見るや、兼ねて子息むすこからうはさに聞いて居つた身の
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
さて難儀なんぎだ、弱り切るぜ。ほんにさ、猫の額ほどな処で二十六けんと尋ねたが分らねえ。あたかも芥子粒けしつぶ選分えりわけるような仕事だ。そうしてまた意地悪く幾たびでもこの総後架そうごうかに行当たるには恐れる。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)