適々たまたま)” の例文
王騎射もっとくわし、追う者王をるをあえてせずして、王の射て殺すところとなる多し。適々たまたま高煦こうこう華衆かしゅう等を率いて至り、追兵を撃退して去る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
適々たまたま以て、その後の睡眠間に於ける夢遊状態の存在を指示しおれる一徴候と認め得べき理由あり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その頃は坊主の学校の先生以上に派手な夢を走らせる自由がなくて、適々たまたま口をすべらして天下の政治家になりたいなどゝ言ひだすと、墨染の衣ひとつで勘当になるのであつた。
風人録 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
恰も今の「内容」が適々たまたま含まれて来るであろうと思われるからである。
予行年ようやく五旬になりなんとして適々たまたま少宅有り、其舎に安んじ、しらみ其の縫を楽む、と言っているのも、けちなようだが、其実を失わないで宜い。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だから適々たまたま借りた金が返せないとなつた時の不都合は凡そ愚劣で話にならない。
総理大臣が貰つた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)