達見たっけん)” の例文
しかも実に明らかな達見たっけんがそのうちにある。光圀のいったところと、頼房のことばとは、まったくひとつであった。血はただしくひとつであった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくせ信念もなければ格別の達見たっけんも持ってはいないので、ただ自己をつくろうに詭弁きべん口舌こうぜつの才を以てすることになる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど。——カコンデチョウヲ救ウ——の策か。さすが達見たっけん。よろしい、今日以後、君を推して征賊の将軍とする。この一生一の大機会を君もよくかしたまえ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将卒たちの会心かいしんとするところは、一番首、一番槍などの手がらにあったが、主将たる者のひそかな満足は、ただひとつ、自分の達見たっけんが的中していたと感じるところにある。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さよう恐懼きょうくして、わびるにはおよばん。——さきの諫言も、いまにして思えば、そちの達見たっけん、ひとつの大策ではあった。また、そちのわたくしなき、誠忠のほとばしりと、んでもおる」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)