達磨茶屋だるまぢゃや)” の例文
年は丁度二十はたち、十四、五の時から淫奔いたずらで、親の家を飛出し房州あたりの達磨茶屋だるまぢゃやを流れ歩いて、十八の暮から下谷へ出た。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やはり「お」の字のおかみの話によれば、元来この町の達磨茶屋だるまぢゃやの女は年々夷講えびすこうの晩になると、客をとらずに内輪うちわばかりで三味線しゃみせんいたり踊ったりする
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奇妙な風体ふうていをして——例えば洋服の上に羽織を引掛けて肩から瓢箪ひょうたんげるというような変梃へんてこ扮装なりをして田舎いなか達磨茶屋だるまぢゃやを遊び廻ったり、印袢纏しるしばんてん弥蔵やぞうをきめ込んで職人の仲間へ入って見たり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ただそのながらみ取りと夫婦約束をしていたこの町の達磨茶屋だるまぢゃやの女だったんです。それでも一時は火が燃えるの人を呼ぶ声が聞えるのって、ずいぶん大騒おおさわぎをしたもんですよ。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「青ペン」と言うのは亜鉛とたん屋根に青ペンキを塗った達磨茶屋だるまぢゃやです。当時は今ほど東京風にならず、のきには糸瓜へちまなども下っていたそうですから、女も皆田舎いなかじみていたことでしょう。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)