這松はいまつ)” の例文
同島南海岸を逍遥しょうよう中、海浜より七、八メートル離れた這松はいまつの根元に、四十五、六歳ぐらいのねず背広、格子縞こうしじま外套オーバアーの紳士がくれないに染んで倒れ、さらに北方十二メートルのところに
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この窟の中で何年いつか焚火した事があるものと見え蘚苔せんたいに封ぜられた木炭の破片を発見した事である、この外には這松はいまつの枯れて石のようになりたる物二、三本とうさぎの糞二、三塊ありしのみである
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
ちょうど身のたけぐらいな這松はいまつやつつじが、うまく体をおおい隠したので、そのままジッと、柵の外を眺めていると、さっき倶利伽羅坂くりからざかの上にみえた二人が、依然と、はばかりない高声で話しながら
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)