返討かえりうち)” の例文
この節のお江戸の市中まちは毎日毎日斬捨きりすてばかりで格別珍らしい事ではないと申しますのに、只今のお話だけが馬場先の返討かえりうちと申しまして、江戸市中の大層な評判……
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
屹度きっと富五郎、一角ということも分らず、それも関取が附いていればようございますが、関取もいず、して見れば敵が分っても女の細腕では敵に返討かえりうちになりますからねえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一人はA国科学界の第一人者フーラー博士、必敗の運命におびえながらも、まだ白人としてのほこりを捨てず、愛機『荒鷲』をもって、武田博士を返討かえりうちしようとしているのだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
お二人が首尾好く本意を遂げられれば好し、万一敵に多勢の悪者でも荷担して、返討かえりうちにでも逢われれば、一しょに討たれるか、その場を逃れて、二重のあだを討つかの二つより外ない。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
返討かえりうちじゃアないかネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
花「よくもわれは恩人の旦那様を斬りやアがった、お隅さん返討かえりうちにしやアがったな此の野郎」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
未亡人は頭痛持でこんな席へはまれにしか出て来ぬが、出て来ると、返討かえりうちなどにいはすまいかと云う心配ばかりして、はてはどうしてこんな災難に遇ったことかと繰り返してくどくのであった。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)