転寝うたゝね)” の例文
旧字:轉寢
絶体絶命、主人公は悶絶する自分の声に驚いて目を覚ますと、波斯小説の上に頬杖をついて転寝うたゝねをしてゐる中、頬杖がはづれて目がさめたと云ふはなしである。
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
取引が無事に済むと、玄知は腰にしたひさごをほどいて、花の下で酒を飲み出した。百姓が夕方野良から帰つてみると、玄知は花の下でいぬころのやうにいびきを掻きながら転寝うたゝねをしてゐた。
今宵丁度汽船が闇の空へ花火ひばなを散らして、波を破つて進んで行き、廊下では番兵が小銃を杖に突いて転寝うたゝねをしてをり、例の薄暗いランプの火が絶え絶えに廊下から差し込んでゐる時
恐々こわ/″\中さ這入へえって見ると旦那さアが書斎の籐椅子に腰さ掛けて眠っているでねえか。あれまア、こんな所で転寝うたゝねさして、風邪引くでねえかとそばさ寄ると、おらもう少しで腰さ抜かす所だったゞ。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
転寝うたゝねの夢の浮世を出でゝ行く
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)