躊躇ちゆうちよ)” の例文
荒布革あらめがはの横長なる手鞄てかばんを膝の上に掻抱かきいだきつつ貫一の思案せるは、その宜きかたを択ぶにあらで、ともに行くをば躊躇ちゆうちよせるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ガラツ八が三人のうちどれを追つ驅けようと、暫く躊躇ちゆうちよするうちに一人殘らず町の闇に解け込んで了つたのです。
此際このさいあるひ倒壞家屋とうかいかおく下敷したじきになつたものもあらうし、あるひ火災かさいおこしかけてゐる場所ばしよおほいことであらうし、救難きゆうなん出來できるだけおほくの人手ひとでようし、しかもそれには一刻いつこく躊躇ちゆうちよゆるされないものがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
花子の上のみ気遣ひてとかく躊躇ちゆうちよのおももちなり。
当世二人娘 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
このに及んで! 躊躇ちゆうちよするところでないよ。早く、早く、早く! 風早、何を考へとる。さあ、遊佐、ええ、何事も僕が引受けたから、かまはず遣り給へ。証書を
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人々があまりのことに躊躇ちゆうちよする間を縫つて、物馴れた平次は、飛び込みざま靜かに抱き起しました。
井戸の中に梯子を入れると、提灯を持つた八五郎は、何んの躊躇ちゆうちよもなく降りて行きました。
彼はにはか躊躇ちゆうちよして、手形用紙を惜めるやうにひねるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
平次は何んの躊躇ちゆうちよもなく曲者が入つた丸窓を指さすのです。強大な自信です。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
神山守は散々躊躇ちゆうちよした末、思ひきつた樣子で話の緒口を切りました。
平次の躊躇ちゆうちよするのを見て、虚無僧の一人は屹となりました。
師匠のお幾は、何やら言ひにくさうに躊躇ちゆうちよするのです。