赭味あかみ)” の例文
やゝ上気した頬の赭味あかみのために剃つた眉のあとが殊にあをく見える細君はかう云ひ乍ら羞ぢらひげに微笑ほゝゑんだ会釈ゑしやくを客の裕佐の方へなげ
その顔には赭味あかみがすっかりなくなっていたし、鼻までが蒼かった。幽霊か、悪魔か、それよりももっと怖いものでも見た人間のような顔付であった。
母は暢気のんきな顔をして暮し出しました。少し肥って、顔にごくわず赭味あかみがかって、立ち居振舞いに豊かな肉が胸や腹に漂うという中年近くの美人です。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
弾正の顔は、次第次第に赭味あかみを失って蒼くなった。言葉の意味が察せられたのであろう。と、彼は静かに椅子から離れ背延びするように立ち上がった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昨日まで赭味あかみがかって健康そうに見えていた彼の顔が、今日は別人のように蒼白く色を失っていた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
目賀野の顔は、いよいよ緊張に赭味あかみを増した。彼の目は鞄にくぎづけになっている。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)