あこ)” の例文
震える手であかるい処へ持出して、顔を見られまいと、傍目わきめらず、血の上った耳朶みみたぶあこうして、可愛らしくかしこまって、右見左見とみこうみ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたし思わずはっとしまして顔あこうなりましてんけど、どういう訳で赧うなったのんかその時は自分で分れしませなんだ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
読本をふところにして校堂に上るの小児が他の少女に対して互いにおもてあこうすることも、仮名を便りに草紙そうし読む幼な心に既に恋愛の何物なるかを想像することも、皆なこれ人生の順序にして
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
朝から晩までさ、年が年中其処そこにぬうと立ちぽかァんと立って居て、而して一体お前は何をするんだい? 吾輩は決してその自ら誇るじゃないが、君の為に此顔をあこうせざるを得ないね。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)