贋造がんぞう)” の例文
中にはこの仕切りがつむじを通り過してうしろまでみ出しているのがある。まるで贋造がんぞう芭蕉葉ばしょうはのようだ。その次には脳天を平らに刈って左右は真直に切り落す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、トランクの持主が、たとえ危急の際であったとはいえ、あの大金をおしげもなく捨てて行ったというのは、少々変です。やっぱり贋造がんぞう紙幣だったのでしょうか。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
似而非にてひ贋造がんぞうといったようなあまりかんばしくない要素を含んでいるが、また一面においてはそうしたかんばしくないものを、もう一ぺんひっくりかえして裏から見たときに
映画雑感(Ⅶ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ある困窮な男が、金を得る手段もつき果てて、一人の女とその間にできた子供とを愛するあまり、貨幣を贋造がんぞうした。当時なお貨幣贋造は死刑をもって罰せられたものであった。
どこそこでは大学生あがりが大道で郵便物を掠奪りゃくだつしたという噂があるかと思えば、またどこそこでは社会的地位からいっても第一線に立っている人々が贋造がんぞう紙幣を作っている。
紀州はじめ諸藩士の家禄かろくは削減せられ、国札こくさつの流用はくふうせられ、当百銭(天保銭)の鋳造許可を請う藩が続出して、贋造がんぞうの貨幣までがあらわれるほどの衰えた世となった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
植木屋ののこに従って切倒される竹からは、贋造がんぞうの小判がゾロゾロと出て来ました。
銅の台に巧みな金鍍金きんめっきをほどこした細工物で、素人しろうと目には真物ほんものの小判と鑑別がつかなかったばかりでなく、贋造がんぞう貨幣犯人の一番むずかしい使用法が巧妙で、江戸中の恐怖になりながらも