賤機山しずはたやま)” の例文
間もなく僕達は浅間神社へ引き返して、賤機山しずはたやま公園へ登った。桜の蕾が大分赤くなっていた。団さんは昨日の久能山に懲りて
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
賤機山しずはたやま浅間せんげん吹降ふきおろす風の強い、寒い日で。寂しい屋敷町を抜けたり、大川おおかわ堤防どてを伝ったりして阿部川の橋のたもとへ出て、くるまは一軒の餅屋へ入った。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
住居は浅間せんげん神社の西で、井宮という処だと云った。駿府城の外曲輪そとくるわをまわり、武家屋敷の裏をぬけてゆくと、まもなく向うに賤機山しずはたやまの緑がけぶるように見えてきた。
雨の山吹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
門際のながれに臨むと、頃日このごろの雨で、用水が水嵩みずかさ増してあふるるばかり道へ波を打って、しかも濁らず、あおひるがえってりょうの躍るがごとく、しげりもとを流るるさえあるに、大空から賤機山しずはたやまの蔭がさすので
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)