貞奴さだやっこ)” の例文
芳町よしちょうやっこ嬌名きょうめい高かった妓は、川上音次郎かわかみおとじろうの妻となって、新女優の始祖マダム貞奴さだやっことして、我国でよりも欧米各国にその名を喧伝けんでんされた。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ここは川上音二郎かわかみおとじろう貞奴さだやっこの夫妻を主脳として、藤沢浅二郎、佐藤歳三、児島文衛、中村信近などの一座で、十一月には「ハムレット」の翻案物を上演していたが、日々満員の好景気で
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
貞奴さだやっこが引退興行のときおなじように招かれて落ち合ったおり、野暮やぼなおつくりではあるが立派な衣裳になった彼女は飾りけのないよい夫人おくさんであった。田村俊子たむらとしこさんが
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かの貞奴さだやっこを妻に迎えるまでは、やはり女形ばかりで押し通していた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
川上貞奴さだやっこ援助たすけに出た時だかに、彼女にも守住の本姓に月華という名を与えたのだった。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ましてその閲歴は波瀾万丈はらんばんじょう、我国新女優の先駆者であり、泰西たいせいの劇団にもその名を輝かして来た、マダム貞奴さだやっこを、細かに書いたらばどれほど大部たいぶの人間生活の縮図が見られるであろう。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
バイブルに親しむ聖徒となり、再転、川上貞奴さだやっこの「女優養成所」の監督となって、劇術研究に渡米し、米国ボストンで客死したとき、財産の全部ともいうほどを、昔日の恋人に残した佳話の持主で
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)