諷然ひょうぜん)” の例文
やがて落葉を踏む音して、お杉ばばあ諷然ひょうぜんと帰って来た。男は黙って鳥をかじっていた。二人共に暫時しばしは何のことばをも交さなかったが、お杉の方からしずかに口を切った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
独語ひとりごとのように云って、お杉は矗然すっくあがったかと見るうちに、左右の人々を一々め廻しながら、彼女かれはふらふらと歩き出した。加之しかも今の騒動さわぎは忘れたように、諷然ひょうぜんと表へ出て行った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)