言挙ことあ)” の例文
一切の「からごころ」をかなぐり捨てて、言挙ことあげということもさらになかった神ながらのいにしえの代に帰れと教えたのが大人うしだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ただ私の言挙ことあげせずにおられないことは、第一に現在「嘗」の漢字に比定せられるアヘまたはニヘという日本語は、単純に食物の供進を意味し
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だからもし「神ながら言挙ことあげせず」とか、「民自然にして治まる」とかいうような社会があったら、そういう所に政治権力が働く心要もなければ可能性もない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
上衣うはぎぬぎ汗みづくなれやかく歎きしかく言挙ことあげ君ひたすらに (内田訓導)
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「百姓には言挙ことあげということもさらにない。今こそ草山の争いぐらいでこんな内輪げんかをしているが、もっと百姓の目をさます時が来る。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
言挙ことあぐと胸ぞ迫りて泣きにける父と母の声はみな誠なり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あの宣長翁であったら、おそらく理を知り、理を忘れるところまで行って、言挙ことあげということもさらにない自然おのずからながらの古の道を一層明らかにされるであろう。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御世みよ御世の天皇の御政おんまつりごとはやがて神の御政であった、そこにはおのずからな神の道があったと教えてある。神の道とは、道という言挙ことあげさえもさらになかった自然おのずからだ、とも教えてある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いにしえ大御世おおみよには、道といふ言挙ことあげもさらになかりき。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)