覆被おつかぶ)” の例文
二階の八疊間に、火鉢が唯一個、幾何いくら炭をつぎ足して、青い焔の舌を斷間しきりなく吐く程火をおこしても、寒さが背から覆被おつかぶさる樣で、襟元は絶えず氷の樣な手で撫でられる樣な氣がした。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
二階の八畳間に、火鉢がたつた一個ひとつ幾何いくら炭をつぎして、青い焔の舌を断間しきりなく吐く程火をおこしても、寒さがそびらから覆被おつかぶさる様で、襟元は絶えず氷の様な手で撫でられる様な気持がした。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
同じ教會の信者だといふハイカラな女學生が四五人、時々野村を訪ねて來た。其中の一人、背の低い、鼻まで覆被おつかぶさる程庇髮ひさしがみをつき出したのが、或時朝早く野村の室から出て便所へ行つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
同じ教会の信者だといふハイカラな女学生が四五人、時々野村を訪ねて来た。其中の一人、脊の低い、鼻まで覆被おつかぶさる程庇髪ひさしがみをつき出したのが、或時朝早く野村の室から出て便所はばかりへ行つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)