襟懐きんかい)” の例文
文天祥ぶんてんしょうが天命に安んずるこそ丈夫の襟懐きんかいではあるが、盗人の屋尻やじりを切るような真似をせにゃならぬのも時節。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掉尾とうびの大功を惜しげもなく割愛して、後進に花を持たせた先輩の襟懐きんかい、己を空しうして官庁の威信を添えた国士の態度、床しくもまた慕わしき限りではないか。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
これは境遇と性質とから来ているので、晩年にはおいおい練れて、広い襟懐きんかいを示すようになった。
私の父と母 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
これによりて見るも先生の平生へいぜい物に頓着とんじゃくせず襟懐きんかい常に洒々落々しゃしゃらくらくたりしを知るに足るべし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
斯老しろう襟懐きんかい想い見るべし。彼粗胆そたん笨腹ほんぷくの慷慨家ならんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)