なり)” の例文
新字:
子供にだつてあまり非道いなりをさせて出したくもありませんから子供達に宛てた金はみんなそのために使つてしまひますし。
人形の家 (旧字旧仮名) / ヘンリック・イプセン(著)
晴着はれぎを着た、女中のやうななりをした、お内儀かみさん風の、まだ若くて大層縹緻きりやうのよい、髮と眼の黒い、活々いき/\とした顏色の女だ。
その小僧はいつも女のなりをしてゐるんですが、私はそれをちやんと見破つてゐたので、一寸からかつて見たんですよ……するとその小僧め、怒りましてね
羽ばたき:Ein Marchen (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
それを羨ましに見ながら、同年輩の見窄みすぼらしいなりをした、洗洒しの白手拭を冠つた小娘が、大時計の下に腰掛けてゐる、目のショボ/\した婆樣の膝に凭れてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
八五郎と一緒に小豆澤小六郎を引立てて來たゐざりの乞食は、お筆が井戸から助け出されて、危ない命を拾つたと聽くと、人々の驚くのも構はず、そのなりで家の中に飛び上がつて
あなたははにかんだやうな、同時にしつかりしたやうな、顏付と樣子をして部屋に這入つて來た。あなたは妙ななりをしてゐた——今のあなたのとよく似てゐた。
と言つてる所へ、家の中から四十五六の汚らしいなりをした、内儀かみさんが出て來て、信吾が先刻寄つて呉れた禮を諄々くど/\と述べて、夫もモウ歸る時分だから是非上れと言ふ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しやがる。尤も、主人兄弟は死んで居るんだから、そのなりぢや葬ひの仕度もなるまい。お前にとつちめられたのは、飛んだ罪亡しかも知れまいよ、——ところで、蘭法のお醫者はどうした
まして、良いなりをした乞食は、當然さうだ。たしかに私が乞うたのは仕事をである。けれども、私に仕事を世話してくれるのは、それは一體誰のつとめなのだらう。