袈裟法衣けさころも)” の例文
わたしは呆気あっけにとられたまま、甚内の姿を見守りました。甚内は今夜も南蛮頭巾なんばんずきんに、袈裟法衣けさころもを着ているのでございます。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、正式に袈裟法衣けさころもをつけて、侍者を従え、ユラリと演壇へのぼって、むんずと坐を組み
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老舗しにせの仏具店で、袈裟法衣けさころも、仏壇仏像から、大は釣鐘までも扱い、その上、役僧達の金融から、上野出入りの商人の取次まで引受けて、巨万の身上しんしょうを作った下谷一番の大町人でした。
井手ゐでかはづの干したのも珍らしくないからと、行平殿のござつた時、モウシ若様、わたし従来これまで見た事の無いのは業平なりひら朝臣あそんの歌枕、松風まつかぜ村雨むらさめ汐汲桶しほくみをけ、ヘマムシ入道の袈裟法衣けさころも小豆あづき大納言の小倉をぐらの色紙
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
そこでお松は能勢様へ行って、お君のために稲荷様のお札をいただいて、帰りに和泉橋のところへ出ると、笠をかぶって袈裟法衣けさころも草鞋穿わらじばきの坊さんが杖をついて、さっさと歩んで来る。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)