行旅こうりょ)” の例文
ことに、そのいぶせき縁の端は、疲れた足にすがられ、家なき子に夜をしのがせ、行旅こうりょ病者の寝床とまでなる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆるらかに幾尺の水晶の念珠ねんじゅを引くときは、ムルデの河もしばし流をとどむべく、たちまち迫りて刀槍とうそうひとしく鳴るときは、むかし行旅こうりょおびやかししこの城の遠祖とおつおや百年ももとせの夢を破られやせむ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
街道は、清掃され、道路や橋も修築され、八月の炎天もすずやかに、十万の行旅こうりょをやすからしめていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝から小林太郎左衛門の店と河岸の前には、おびただしい行旅こうりょの荷物やらこうりやらが、淀川から廻送され、それをまた、門司もじせきへ行く便船に積みこむので、ひどく混雑していた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)