血腥ちなまぐ)” の例文
夜気にただよう血腥ちなまぐさい闇の中に、斬ッて曳いた一角の白刃しらはと、しめた! というみにゆがんだ顔とが、物凄くいて見えた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つは志士召捕り、浪土取締りなぞと血腥ちなまぐさい殺傷沙汰さっしょうざたがつづきますゆえ、それをおびえての事かとも思われますので厶ります
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
わたしにはわかりません、毎日毎日血腥ちなまぐさい事件を扱って居ると、かえって頭脳あたまが混乱してしまって、その間から公式も哲学も見出す気にはならないのです」
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
あたりの凄寥せいりょうとした夜気が、血腥ちなまぐさくドロドロとよどんだ。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
江戸の眞中に田圃のあつた時代、この邊一帶を大根畠と言つた頃の三組町には、隨分藪も草原もあり、夜分は血腥ちなまぐさい事があつても不思議のない場所でした。
あたりの大地、あたりの草、すべてが朱く泥んこになって、吐き気を催すような血腥ちなまぐさいものがみなぎると、それまで支えていた牢人たちも、とうとうたのむ助勢を待ちきれなくなって
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぽんと、かんふたが開かれたように、血腥ちなまぐさいつづらの中がのぞかれた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)