藺席ござ)” の例文
あくる朝、友の強ゐてとゞむるをさま/″\に言ひ解きてていのぼる。旅の衣を着け、草鞋わらぢ穿うがち、藺席ござかうぶればまた依然として昨日きのふの乞食書生なり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
われは身に一枚の藺席ござを纏ひ、しほたれたる白地の浴衣ゆかたを着、脚には脚絆きやはん穿うがたず、かしらには帽子をも戴かず、背には下婢げぢよの宿下りとも言ひつべき丸き一箇ひとつの風呂敷包を十文字に背負ひて
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
一時間ののち、われは鳥居峠の絶巓、御嶽おんたけ神社遙拜所の華表とりゐの前なる、一帶の草地に藺席ござを敷きて、峠を登り來りし勞を醫しながら、じつと眼下に展げられたる木曾の深谷しんこくの景を見やりぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)