蕎麦餅そばもち)” の例文
熱い灰の中で焼いた蕎麦餅そばもちだ。草鞋穿わらじばき焚火たきびあたりながら、その「ハリコシ」を食い食い話すというが、この辺での炉辺ろばたの楽しい光景ありさまなのだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なおまた炉中には、蕎麦餅そばもちらしいのが幾つも、地焼きにころがしてある。外気が寒くなるにつれて、炉辺の人間味が、いよいよ増して来るのを常とする。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただしこの話の輪廓りんかくは古い形で、ねずみ蕎麦餅そばもちを御馳走した御礼に、招かれて鼠の国へ行くというのと、穴へ握飯を落したのを追掛けて入ると、中には地蔵様がいてわしが御馳走になった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あかあかと燃える焚火たきびの側で、焼きたての熱い蕎麦餅そばもちに大根おろしを添えて、皆なで一緒に食う事を楽みにした広い炉辺の方へ帰って行った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あの方のは、上りはな草鞋わらじを取っておりますところと、病気で行燈の下に休んでいるところとを取りました、それから昨日は、品右衛門爺さんが蕎麦餅そばもちを食べているところを……」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)