蕃殖はんしょく)” の例文
その蕃殖はんしょくにもっとも注意を尽くせど、各部族その種馬を惜しみ、他部族の牝馬と交わらざらしむる故、馬種の改善著しく挙がらず。
それで鼠が蚫を食って蕃殖はんしょくし、また或る年には蚫に食われて減って行くという話があり、或いは海に入って海鼠になるのだというような話さえあったが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
沙汰書さたしょに——向後、土地墾闢こんぺき、人民蕃殖はんしょく、北門ノ鎖鑰さやく厳ニ樹立シ 皇威御更張ノ基ト可相成あいなるべく——とあり、黒田清隆の上書にもちゃんと明記されている
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
物産を蕃殖はんしょくせしめ、有無うむを相通ぜしめ、水道、溝渠こうきょ、貯蓄等の民政を振作し、いて鰥寡かんか孤独こどく愛恤あいじゅつする等のおのずから現時の国家社会制を実践したるもの一にして足らず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「左様、この地球——この地上が、地上として今日のように固まるまでには、幾多の生物が現われて蕃殖はんしょくしたかと思うと、それが全く種切れになって、次の時代に移り……」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その木賊はそこの縁先に非常に夥しく蕃殖はんしょくし、青い細い茎が雨の脚のように一面にすくすくと群生しているのがちょっと奇異な見物みものなので、珍しいなあと思った当時の印象が
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがことしたくさん蕃殖はんしょくしたのでこちらへも分けてよこしたものだろう。
球根 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうしてここは禁猟区になっておるので、猿は年々蕃殖はんしょくするそうである。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
然るに一方社会の悪分子は何等の道徳律にも束縛せられずして彼等の同族を蕃殖はんしょくせしめてゐるのである。かくの如く調子高き理想主義は中世紀の修道院に於けるがごとき同一の結果を生ずるであらう。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
西インドへ輸入するとたちまち風変りとなって鳴きさわがず、その代りにいつ盛るという定めもなく年中唖でやり通しで、林中に食物多き故、野生となって大いに蕃殖はんしょくす。
沖縄には麝香鼠じゃこうねずみって、特殊の臭気を発し、また鳴く声もこちらの鼠とちがったのが多いそうだが、鹿児島だけにはそれが蕃殖はんしょくしていつの頃にか船で運ばれたものと想像せられており
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)