蔵前くらまへ)” の例文
旧字:藏前
第三に見える浅草はつつましい下町したまちの一部である。花川戸はなかはど山谷さんや駒形こまかた蔵前くらまへ——そのほか何処どこでも差支さしつかへない。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
学校の事もなにも忘れて、駒形こまがたから蔵前くらまへ蔵前くらまへから浅草橋あさくさばし………れから葭町よしちやうの方へとどん/\歩いた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
忘れてしまへあきらめてしまへと思案はめながら、去年の盆にはそろひの浴衣ゆかたをこしらへて二人一処に蔵前くらまへ参詣さんけいしたる事なんど思ふともなく胸へうかびて、盆に入りては仕事にいづはりもなく
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)