蔀戸しとみど)” の例文
この家の女部屋は、日あたりに疎い北の屋の西側に小さな蔀戸しとみどがあつて、其をつきあげると、方一間位な牕になるやうに出来てゐる。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
子供達はこんな日には表の間の、蔀戸しとみどの障子をあけ肩を並べて往来を見ながら唄った。
立春開門 (新字新仮名) / 河井寛次郎(著)
荒い風が吹き出して簡単な蔀戸しとみどなどはひしひしと折れそうな音をたてているのに紛れて人が忍び寄る音などは姫君の気づくところとなるまいと女房らは思い、静かに薫を導いて行った。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中将に「聞いてみろ」という手まねをする、中将は耳をかしげた。なるほど聞こえる、ちん、ちん……紛れもなく小判の音である、中将はごくりと唾をのんだ、そして蔀戸しとみどへすり寄って中をのぞいた。
山にしてかすけかりしか蔀戸しとみどに冬はここだくのさきめの絵馬
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
姫は、蔀戸しとみど近くに、時としては机を立てて、写経をしていることもあった。夜も、侍女たちを寝静まらしてから、油火あぶらびの下で、一心不乱に書き写して居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
荒々しい声と一しよに、立つて表戸と直角かねになつた草壁の蔀戸しとみどをつきあげたのは、当麻語部たぎまかたりおむなである。北側に当るらしい其外側は、牕を圧するばかり、篠竹が繁つて居た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
荒々しい声と一しょに、立って、表戸と直角かねになった草壁の蔀戸しとみどをつきあげたのは、当麻語部たぎまのかたりおむなである。北側に当るらしい其外側は、まどを圧するばかり、篠竹しのだけが繁って居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その西側に、小な蔀戸しとみどがあって、其をつきあげると、方三尺位なまどになるように出来ている。そうして、其内側には、夏冬なしにすだれが垂れてあって、戸のあげてある時は、外からの隙見をふせいだ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)