蒼澄あおず)” の例文
苗木の城主、花村甚五衛門は押明方おしあけがたの月影に蒼澄あおずんで見える雪の山を縁にたたずんで眺めながら卒然としてこう云った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お銀はそう言って濡れたままの身体にあわせを引っかけ、蒼澄あおずんだ顔に、ニッコリ淋しい微笑を浮べるのです。
船の中でも人目をいとって、紺がすりのその単衣ひとえで、肩から深く包んでいる。浦子の蹴出けだしは海の色、巌端いわばな蒼澄あおずみて、白脛しらはぎも水に透くよう、倒れた風情に休らえる。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒼澄あおずんだような頬をぴりぴりさせ、そして深い苦悩を訴えるかのように
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)