蒔岡まきおか)” の例文
先方は謙遜けんそんして、蒔岡まきおかさんと私とでは身分違いでもあり、薄給の身の上で、そう云う結構なお嬢様に来ていただけるものとも思えないし
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蒔岡まきおか方では、悦子が七月の末あたりから、去年ほどではないけれども又少し神経衰弱と脚気かっけの気味があって、食慾が衰え、不眠症を訴え始めたので
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蒔岡まきおかの家名と云うこと、取り分け雪子ちゃんへの影響と云うことを、念頭に置いて行動してくれるように、———と、少しくど過ぎるくらいに云った。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
東京へ来てしまえば「蒔岡まきおか」などと云ったって知っている者はないのだから、下らない見えを張るよりは、少しでも財産を殖やすように心がけた方がよい
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
云うまでもなく有馬の旅館では蒔岡まきおかの姓を隠して、何処どこかの夫人が療養に来ている体裁で宿泊するのである。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かく雪子さんを大垣まで寄越してもらいたいと云って来た、沢崎家は数千万円の資産家で、今日の蒔岡まきおか家とは格段の相違があり、不釣合ふつりあい過ぎて滑稽こっけいのようだけれども、先方は奥さんに死なれて
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それを大阪から蘆屋まで運んで来るのは厄介やっかいであるから、蒔岡まきおか方では階下の二た間つづきの洋間の家具を取り払い、食堂のうしろに金屏風きんびょうぶを立てて其方を舞台にし、応接間の方を見物席として
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蒔岡まきおかさんの奥さんとは随分仲好しなんだけれども近頃は掛け違って長いことお目に懸らない、いつだったか二三人で蘆屋のお宅をお訪ねしたら黄疸おうだんておられたことがあった、それがもう余程前で
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)