萱笠すげがさ)” の例文
彼は肩に掛けている旅嚢りょのうを揺りあげ、持っている萱笠すげがさをふらりと、その岩のほうへ振った。すると、老人の顔を緑色の影がかすめた。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さらさらと乾いた粉雪だから、功兵衛は萱笠すげがさをかぶっただけで下城した。彼は登城して必要のない限り、供の者は帰らせていた。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小砂利の鳴る音を聞いたからであるが、振返ってみると帯刀たてわきであった。萱笠すげがさをかぶり短袴たんこに草履ばきで、釣竿つりざお魚籠びくを持ち、餌箱えばこひもで肩に掛けていた。
着ている生麻きあさ帷子かたびらも、はかまも、汚れてほこりまみれで、萱笠すげがさをあみだにかぶり、彼は刀を肩にかついでいた。
「たった二度か三度会っただけなのに、相手は旅姿で萱笠すげがさをかぶったまま、街道を歩いていたのに、それでもわかったじゃないの、あたしたちはどういうわけなの」
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
頼母は萱笠すげがさをかぶり、腰には脇差だけ差して、あわせの着ながしであった。堤からおりたところは、もろくなった堤の土が崩れるため、ひとところ高く、水の中へと突出ている。
葦は見ていた (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
松造は茶色になった萱笠すげがさかぶった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)