花崗みかげ)” の例文
その間を水に浸された一束の白糸が乱れたように、沮洳じめじめ花崗みかげの砂道があって、これでも飛騨街道の一つになっている、東には前に言った穂高や、槍ヶ岳、やや低いが西に霞沢岳
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
その辺まで行くと、薄濁りのした日も緑色にうつくしい木曾川の水が白い花崗みかげの岩に激したり、石を越えたりして、大森林の多い川上の方から瀬の音を立てながら渦巻うずまき流れて来ている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私どもが御機嫌伺いに参りましても根府ねぶ川の飛石とびいし伝い、三尺の沓脱くつぬぎは徳山花崗みかげ縮緬ちりめんタタキ、黒縁に綾骨あやぼね障子しょうじ。音もなく開きますれば青々とした三畳敷。五分べり南京更紗なんきんさらさ。引ずり小手ごての砂壁。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こうして女はすぐ引き上げられ、石段の花崗みかげ舗石ほせきの上に置かれた。
花崗みかげの裸岩にかじりついたときには、いよいよ日本北アルプス中の絶大なる「岩石の王さま」へ人間の呼吸いきがかかるのだと思った、この岩壁は十町ほども、するすると延び上って
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
幅濶はばびろの二筋三筋に別れ、川と川との間には、花崗みかげの白い砂の平地と、この平地にみどりの黒髪をくしけずる処女の森とで、水は盲動的に蛇行して森と森との間を迂回する、あるいは森を突き切って
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)