芋坂いもざか)” の例文
麻布芋坂いもざかの津田角右衛門——そう聞いた約束の屋敷を、かれはさがした。かなりな構えで、取次は、いいつけられてあったと見えて
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
谷中芋坂いもざかの名物羽二重はぶたえ団子だんごがアンポンタンのお茶受けに好きだった。その団子屋の近くは藤木さんの住居になった寮だ。
主人は芋坂いもざかの団子を喰って帰って来て相変らず書斎に引きこもっている。細君は——細君は何をしているか知らない。大方居眠りをして山芋の夢でも見ているのだろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四方あたりを見廻すと、芋坂いもざかへ降りる木立の中に、チラリと影が射した。——ねえさん、ちょいと待った——と、追っかけると、いきなり闇の中から飛出して、ドンと来た者がある。
大「拙者は根岸の日暮ひぐれヶ岡おかる、あの芋坂いもざかを下りた処に」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
浅草の金竜山にしてもあんと、きなこと、ごまのついた餅、芝の太々餅だいだいもちもおなじくであり、大橋ぎわのおだんご、谷中芋坂いもざかのおだんご、そのほか数えたらいくらでもあるが——
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
行きましょう。上野にしますか。芋坂いもざかへ行って団子を食いましょうか。先生あすこの団子を
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)