艶姿あですがた)” の例文
顔容かおかたちは夜目、ことには、頭巾眼深——ちょいとハッキリしないのだが、この艶姿あですがたから割り出すと、さもあでやかだろうとしか考えられない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それにしては、どこやらあかぬけし過ぎた艶姿あですがただ。旅粧たびよそおいもきりっと身についていて、裾みじかにをからげ、市女笠の紅紐べにひもが白いあごによく似合っている。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここの階上の裏側の窓から新橋の美妓諸姉の夕化粧の艶姿あですがたがみえるとて、若いものたちが事に託してかいまみたものだとて今日の古老のうちあけ話である。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
谷中や湯島、芳町あたりの蔭間かげま茶屋にも、こんな艶姿あですがたの少年が養われて居たことは言うまでもありません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その日一座に連なった幇間ほうかんも芸者もかねて聞き及んだ高名の女師匠を眼のあたりに見うわさに違わぬ姥桜うばざくら艶姿あですがた気韻きいんとにおどろかぬ者なく口々にめそやしたというそれは利太郎の胸中を察し歓心を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
松五郎の娘お駒、山の手一番と言はれた十九の艶姿あですがたが、無慙大地の上に仰向に倒れて、玉を延べたやうに美しい咽喉、少し左寄りの方へ、矢文を結んだまゝの矢が、箆深のぶかく突つ立つて居たのです。
今を時めく寵妃とたれ知らぬはない阿野廉子やすこなどの艶姿あですがたであった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃、雪之丞が、松枝町屋敷玄関先まで艶姿あですがたをあらわしたとき
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
松五郎の娘お駒、山の手一番と言われた十九の艶姿あですがたが、無慙むざん大地の上に仰向けに倒れて、玉を延べたように美しい喉笛、少し左寄りの方へ、矢文を結んだままの矢が、箆深のぶかく突っ立っていたのです。
口々に、提灯ちょうちんで、雪之丞の艶姿あですがたを振り照らしながら呼びかけた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)