自責じせき)” の例文
いやいや彼の自由をもっと狭い立場に追いつめていたのは彼にはどうしても軽く持てない自責じせきだった。長としての責任感だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして自分の机の前に身体をげ出すと共に、此のあさましい試みが生んだ惨劇さんげきの中に、間接ながらとりもなおさず殺人者である自分を見出して、はげしい自責じせきと恐怖とに身を震わせました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふと自責じせきの念が、鋭く私を打った。桜島に来て以来、私は家にも便りを出さない。桜島に来て居ることすら、私の老母は知らないだろう。私の兄は、陸軍で、比島にいる。おそらくは、生きて居まい。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
つよい慚愧ざんきと、自責じせきしもとに、打って打って打ちぬかれるのだった。誰か、杖をあげて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
枕の上の顔よりも青じろい顔して、清十郎はその側に寂然じゃくねんと坐っていた。自分がにじった花の痛々しい苦悶に対して、自責じせきこうべを垂れたまま、さすがに彼の良心も苦悶しているらしい。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一夜を懊悩おうのうした結果である。自責じせきから来た深刻な決意が眉にもみなぎっていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)