臥蚕がさん)” の例文
旧字:臥蠶
もっとも河野は、綺麗に細眉にしていたが、剃りづけませぬよう、と父様の命令で、近頃太くしているので、毛虫ではない、臥蚕がさんである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年の格好は五十歳あまりで、鬢髪びんぱつに塩をまじえている。太くうねっている一文字の眉は、臥蚕がさんという文字にうってつけである。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
駒ヶ岳の南には朝与あさよ岳、其上には小島君の所謂いわゆる西奥仙丈岳が臥蚕がさんの如く横たわっている。鳳凰山、地蔵岳。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
と、階下を見ると、その人、身の丈は長幹の松の如く、髯の長さ剣把けんぱに到り、臥蚕がさんの眉、丹鳳たんほうまなこ、さながら天来の戦鬼が、こつとして地に降りたかと疑われた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頂の少し平な四郎岳は、其傾斜の緩い、そして恐ろしく長い山脚を南に投げ出して、あたかも頭を北に向けた臥蚕がさんに似ている。この二山の間には至仏山が群を抜いて高い。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)