能管のうかん)” の例文
「いや、城内は相かわらずで、深更まで狭間はざま明々あかあか燈火ともしびが望まれ、どうかすると濠水ほりみずに、悠長な能管のうかんの音や小鼓こつづみの鳴りひびいていたりすることもありますが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中から出たのは、平凡な能管のうかんが一冊、それを膝の前に開いて春日藤左衛門は見詰めました。
尺八じゃありませんよ、お神楽笛かぐらぶえの横笛なんで、能管のうかんでもあることか、ただの横笛ですよ。
彼方の舞台から聞えてくる能管のうかんつづみの急拍子によって、老公には番組の進行がわかっているらしいのである。そしてここに身をおいている限りのある時間に胸はかれてくるらしかった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)