耕耘こううん)” の例文
十二 俳句とは芭蕉によって縄張りせられ、芭蕉、蕪村、子規によって耕耘こううんせられたところの我文芸の一領土であります
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
が、再び思うに、むやみと得物えものを振廻しては、れない事なり、耕耘こううんの武器で、文金に怪我をさせそうで危かしい。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつて盛夏に当って済寧の守将、民を督して城を築かしむ。克勤曰く、民今耕耘こううんいとまあらず、何ぞ又畚鍤ほんそうに堪えんと。中書省ちゅしょしょうに請いてえきむるを得たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
足下には耕耘こううんし採集し得るもの、頭上には研究し瞑想めいそうし得るもの、地上に数株の花と、空にあらゆる星辰せいしんと。
二、三の川を飛び越さなければならなかった。次には、甜菜てんさいの畑と耕耘こううん地との広々とした中に出た。とうていそれから出られないような気がした。平野はでこぼこしていた。
ちょうど元の順帝の至元丁丑しげんていちゅうの年のことで、恐ろしい兵乱があった後の郊外は、見るから荒涼を極めて、耕耘こううんする者のない田圃はもとの野となって、黄沙と雑草がまだら縞を織っていた。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
道路のかたわら、沼沢の周囲、岩の斜面の上、実行の戦場や廃墟はいきょの間、フランスの山も野もすべては、見渡す限り遠くまで、耕耘こううんされていた。それはヨーロッパ文明の大庭園であった。
一言にしてこれをいうとやはり元禄の芭蕉一派が大きな縄張をした土地の中にあって、元禄時代には十分に耕耘こううんの暇がなかった方面にすきを下ろして仕事をしているというに過ぎないのであります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)