老妓ろうぎ)” の例文
この老妓ろうぎmalintentionnéマルアンタンションネエ に侮辱を客に加えて、その悪意を包み隠すだけの抑制をも自己の上に加えていないのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大川端おおかわばたの方でよく上方唄かみがたうたなぞを聞かせてくれた老妓ろうぎが彼の側へ来た。この人は自分より年若な夫の落語家と連立って来て、一緒に挨拶した。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
百人近くも集った見送り人の中には先代の恩顧を受けた芸人、新町や北の新地の女将や老妓ろうぎも交っていたりして、さすがに昔日の威勢はなくとも
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
平出園子というのが老妓ろうぎの本名だが、これは歌舞伎俳優の戸籍名のように当人の感じになずまないところがある。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
既に芸者とよりは師匠らしく見える老妓ろうぎもあった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
持った老妓ろうぎの一人がべったり着き切りでまあお一つまあお一つと重ねさせるお蔭で思いのほか時間をつぶしたが食事を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もう芸者ならば老妓ろうぎと云ってもよい年頃だとすると、そのくらいな度胸があっても不思議はない訳であった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、若い芸者が神戸言葉を丸出しにして、小声で老妓ろうぎに話しかけた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「年増の女はみんな心臓や。僕の知ってる北の芸者で、これはもう四十以上の老妓ろうぎやねんけど、東京へ行って電車に乗ったら、わざと大阪弁で『降りまッせえ』と大きな声で云うてやりまんねん、そしたらきっと停めてくれはります云う女があるねんが」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
するくせがあるのでござりまして元来が苦労性なのでござりましょうか若い時分から取りもちの上手な老妓ろうぎのようなところがあったのでござりますが考えてみればお遊さんに身も心もささげるために生れて来たような女でござりましてわたしは姉さんの世話を
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)