義父ちち)” の例文
山内竜平の船室では、義父ちちにあたる野崎孝助と二人の息子が暗いうちから起きて、真剣な顔で何度目かの持物整理をやっていた。
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
うっかりすると、この子のために再び鎌倉へ召し出されるハメになり、兄の一万も義父ちちの曾我もともに成敗をうけるようなことになりかねない。
曽我の暴れん坊 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
すぐ中村の家へ帰って、母の顔を見たかったが、義父ちち筑阿弥ちくあみを思うと、わが家の垣にも、いばらが感じられる。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨日料理番のクロロが「義父ちちが他の酋長しゅうちょう達と一緒に、明日、何か御相談に上るそうです。」と言った。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その子の母に連合つれあいがあって、生みの母の縁から深く附合つきあうようになったところ、なにしろその子の義父ちちだというので、何かと家の事へも手を出したがるし口も出すのです。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それ以外には陣十郎に対して、優しく忠実にまめまめしく、尽くさねばならぬ境遇となり、義父ちち上の敵を討つことは、武士道の義理には相違ないが、生命——操の恩人には
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その夜——義父ちちの謙吉の顔が、夜食の膳でちがっていた。
方子と末起 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だから秀吉は、今もって、およそおくびにも、義父ちちの思い出ばなしだけは、口に出したことがない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勿論陣十郎は義父ちちかたき、討って取らねばならぬ男、とはいえ義父を討ったのも、その一半は自分に対し、恋慕したのを自分が退け、義父や主水が退けたことに、原因があることではあり
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
若主人の於福おふくの前へ、彼がはじめて目見得に出た時は、日吉は板の間にかしこまり、於福は座敷の中で、義父ちちの捨次郎だの、美しい御寮人などと、茶うけの菓子など喰べながら
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへ義父ちちの筑阿弥が、母へいう無理だの、自分の頭にうけるこぶしだのの衝動もあって
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——呂布りょふっ、呂布ッ。——呂布はあらざるかっ、義父ちちの危難を助けよ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)