総浚そうざら)” の例文
下巻には楽屋総浚そうざらひのさま面白く尾上雷助らいすけの腰掛けて髪をはする床屋とこや店先みせさき大谷徳治おおたにとくじが湯帰りの浴衣ゆかた手拭てぬぐいひたいにのせ着物を小脇こわきかかへて来かかるさまも一興なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
五ツごろから、こんどは品川宿の入り口に網を張ってもどりの客の総浚そうざらい。麻布へひとり、すぐ取って返して芝口へひとり、鉄炮洲へひとり。夕方のぶんからあわせて往きと帰りで十一人。
歌舞伎座の楽屋における総浚そうざらいの時だけで、個人としては全然面識もなかったが、見るところ、若い芸人には似合わない不愛嬌ぶあいきょうな、いわゆる傲岸不屈ごうがんふくつといったような人物であるらしかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小説の上で書きのこした“木曾余聞”とか前後の著者雑感を一応総浚そうざらいしておこうと思う。貴重な枚数を少々勿体もったいない気もするのだが、「思いきってこんどはそれに」という編集の希望でもあった。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)