綱曳つなひき)” の例文
綱曳つなひきにて駈着かけつけし紳士はしばらく休息の後内儀に導かれて入来いりきたりつ。そのうしろには、今まで居間に潜みたりしあるじ箕輪亮輔みのわりようすけも附添ひたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
黒紋付の羽織に山高帽をかぶった立派な紳士が綱曳つなひきで飛んで行く。車へ乗るものはいきおいがいい。あるくものは突き飛ばされても仕方がない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
粟穂あわぼ稗穂ひえぼの古風なるまじないから、家具農具に年を取らせる作法までが一つであった。綱曳つなひきの勝負もまた年占の用に供せられた。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今でも九州や東北の田舎いなかで年に一度の綱曳つなひきという行事などは、ちょうどこの子ども遊びとの境目さかいめに立っている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もう綱曳つなひきから突き飛ばされる気遣きづかいはあるまいとまで思う。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)