絵馬堂えまどう)” の例文
「ふーむ、なかなかいい女だ。一角がそういうなら、おれが様子を見に行ってやるから、しばらく、向うの絵馬堂えまどうで待っていねえ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神社の境内に在るものでわたくしの興をひくのは絵馬堂えまどう神楽堂かぐらどうばかりである。絵馬堂は奉納の絵額と俳諧の献句が見られ、神楽の催しには仮面の可笑味がある故である。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこの絵馬堂えまどうに掲げてあります二枚の押絵おしえの額ぶちに「お別れ」を致しました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分は絵馬堂えまどうかかげてある子別れの場の押絵おしえの絵馬や、雀右衛門じゃくえもんか誰かの似顔絵の額をながめたりして、わずかになぐさめられて森を出たが、その帰り路に、ところどころの百姓家ひゃくしょうやの障子のかげから
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かねチャンギリもきうきとして、風流小袖ふうりゅうこそで老幼男女ろうようなんにょが、くることくること、帰ること帰ること、今宮神社いまみやじんじゃの八神殿しんでんから、斎院さいいん絵馬堂えまどう矢大臣門やだいじんもん、ほとんどりなすばかりな人出ひとでである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)