絵事かいじ)” の例文
私はこれらの光景に接すると、かならず北斎あるいはミレエを連想して深刻なる絵画的写実の感興をいざない出され、みずか絵事かいじの心得なき事を悲しむのである。
「春風馬堤曲」にあふれたる詩思の富贍ふせんにして情緒の纏綿てんめんせるを見るに、十七字中に屈すべき文学者にはあらざりしなり。彼はその余勢を以て絵事かいじを試みしかども大成するに至らざりき。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
はじめ陸軍士官学校に入らむとして体格検査に合格せざりしかば、素志をひるがえして絵事かいじに従へるなり。そのはじめ武を以て身を立てんと欲せしはその家世〻征夷府に仕へて徒士かちたりしによれるもの
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)