細君かない)” の例文
私の家は、私と、細君かないと、それから弟が一人あって、その弟は、今度の戦役に従軍して、金鵄きんし勲章ももらっておりますが、べつに他人ひとさまから、家庭のことを
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
良人をつとは三高の語学教授で京都に住み、細君かないは音楽学校のヴイオロニストで東京に居るのでは、まるで七夕様のやうに夏休みをたのしむ他には、いい機会もあるまい。
何でも今日まで千名ばかしの兵士を喜ばせたさうで、意固地いこぢな牧師の細君かないなどはおつ魂消たまげてしまつて
「それでは、お礼を申します、どうも御親切にありがとうございました、それで私の方としましては、細君かないもよく調べ、お杉も調べましたうえで、いよいよ不埒ふらちをはたらいておりますなら」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この談話はなしを聴いた女学生は今ではそれ/″\巣立すだちをして人の細君かないになつてゐるが、誰一人詩人や芸術家にはかたづいてゐないらしいから、髯の有無あるなしは余り問題にはしてゐない。
独逸人はかう言つて、自分の細君かないや娘やに有島氏を紹介した。娘はやはり美しかつた。
紳士は真新しい白い手帛ハンケチで椅子の埃をはたき、そこらに散らばつてゐる麺麭屑パンくづを払ひ落したりした。手帛ハンケチはその朝紳士の細君かないが、恩にせながら箪笥の底から態々わざ/\取り出して呉れたものだつた。