素木しらき)” の例文
かえしてくれないから、その代りに私が精根こめて彫った素木しらきの普賢菩薩、これは琢堂一代のうちでも、五本の指に折られる傑作だ。
(いつも葛織きびらおりの帽をかぶり、白木綿しろもめん白麻しろあさの着物をまとい、素木しらき輿こし、或いは四輪の車に乗って押されてあるいた)
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古びた素木しらきのテエブルに大きな木の盆を据えて、黄ばんだ麦粉をしきりに両手でねかえしていた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と言う愛子と一緒に、岸本はその素木しらきの檜木板にながめ入った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小石川の金富坂を上がって、貧弱な素木しらきの門をはいると、玄関までの十数間が両側に丸太で棚を組んで、頭の上まで、南瓜かぼちゃがぶらさがっている。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
だが向って右手の硝子窓には黄の赤い蘭科の花の鉢が一つ、大きな素木しらきのテエブルの上に載せてあって、その怪しげな生物が、またこの大陸風のこの雨の日の外光を思いきり吸いふくれていた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
又六は伜のめいけづつた上、神々しい素木しらきの佛樣へ、見世物向きに、あんな下品な彩色をして了ひました。
素木しらきの卒塔婆のへりに来てぬる螇蚸はたはたの子のさみどりの翅
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
粉本ふんぽんには勿體ないが嫁のお倉を使つて、素木しらきのまゝ死んだ女房の供養に、菩提寺ぼだいじに納める積りでしたが、フトした手違ひから、雲龍齋又六に横取りされたので御座います
粉本ふんぽんには勿体もったいないが、嫁のお倉を使って、素木しらきのまま死んだ女房の供養に、菩提寺に納めるつもりでしたが、フトした手違いから、雲龍斎又六に横取りされたのでございます
手に取ったのは、素木しらきに彫った普賢菩薩ふげんぼさつ像、台から仏体まで、せいぜい一尺二三寸もあるでしょうか。毛ほどの顔料も用いない、全くのうぶな檜材ひのきざいですが、少し荒いタッチで、のみの跡が匂うばかり。