ふん)” の例文
ふんぷんたる雪片を空中に巻き上げたが、その一部は落ちて来て、また再び風に乗って、海の方へすみやかに飛んで行ってしまった。
女のつけた振袖に、ふんたる模様の尽きて、是非もなき磨墨するすみに流れ込むあたりに、おのが身の素性すじょうをほのめかしている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吾人の標準とか題したる某君の国家主義論は、推断陋劣ろうれつ、着眼浅薄、由来皮相の国家主義を、弥益いやます皮相に述べ来りたる所、稚気ふんとして近づく可からず候。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは自分の左右前後にふんとして活躍する人生を、容赦なく横切って目的地へ行く時の快感であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)