紙片かみ)” の例文
投げ出した紙片かみと肉一片——毛髪の生えた皮肌はだの表に下にふっくらとした耳がついて、裏は柘榴ざくろのような血肉のかたまりだ。暑苦しい屋根の下にさっと一道の冷気が流れる。
が、手に持って居るのは、電報の紙片かみではなく、赤い電話郵便の紙片であった。彼は少し安心した。彼の友人の荒井は、何かと云うと直ぐ電話郵便を利用する男であった。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
書きちらしの紙片かみを一つ一つマッチで焼きながら
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
ビアトレスの書残した紙片かみを坂口に見せた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
お染風という悪性の感冒が江戸中に猖獗しょうけつを極めた折り、「久松留守」と書いた紙を門口に貼り付けて疫病除やくびょうよけの呪禁まじないとすることが流行はやって、ひところは軒並にその紙片かみが見られたが