糞度胸くそどきょう)” の例文
彼女自身でさえ、どうしてこうも落ちつくことが出来たのか、仮令人一人殺した上の糞度胸くそどきょうとはいえ、不思議に思う程であった。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そう気が付いた刹那せつなに僕はモウ一度気が遠くなりかけたね。そいつを我慢すべく熱い茶を一杯グッとみ込むと、破れカブレの糞度胸くそどきょうを据えたもんだ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やるなら、やれ、と糞度胸くそどきょうを据え、また白樺の蔭にひたと身を隠して、事のなりゆきを凝視しました。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
意地悪いうちの連中がやってきて、なにか言うなら言え、とそのときの糞度胸くそどきょうはきめていたのですが、愈々いよいよ話をする段になるとなにから話そうかと切りだすすべをさがして
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ところが、蛾次郎も、近ごろはせんのうちより、だいぶ強くなってきた。もともと彼は石投げの天才であって、智能ちのうの点はともかくも、糞度胸くそどきょうがつくとなると、どうして、容易よういにあなどりがたい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝手にしやがれ、と私は糞度胸くそどきょうを据えて
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「お前の漫画は、なかなか人気が出ているそうじゃないか。アマチュアには、こわいもの知らずの糞度胸くそどきょうがあるからかなわねえ。しかし、油断するなよ。デッサンが、ちっともなってやしないんだから」
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)