粘力ねんりょく)” の例文
かれはまた、草木の中を歩いて、紫、あいべに、さまざまな花をもんで試みたが、どれも日光にあえば色を失うのみか、筆にかかる粘力ねんりょくがない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さけびながら、手にのこった黒いぬのをほうりてると、そのはずみにみょう粘力ねんりょくうでに感じたので、思わず、オヤとふりかえると、そのかたさきへ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを一口にいうと「ねばり」であった。彼の太刀は実によく「粘る」ところに先天的な特色があった。自分以上の力の者に向えば向うほど、その「粘力ねんりょく」を出すのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょうの四のごとく、伸縮の自由な孫兵衛の腕ぶしには、一種の粘力ねんりょくがあってなかなかあなどり難い。ことには弦之丞がすでに散々な疲労をおぼえているに反して、その気息には新しい力がある。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)