米搗こめつ)” の例文
伊緒はたすきをとるいとまもなかった、御上納の米を俵にしてだし、売る分の籾摺りをし、米搗こめつき、焚木たきぎとり、むしろ編み、繩ない、そして蔬菜畑そさいばたけのせわなど
日本婦道記:春三たび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
穀粉の方はのち石臼いしうすくようになっても、なお女性の労働であったけれども、米搗こめつきは杵が大きな横杵に変ると、水車以前からすでに男に任せきりになって
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
和尚は法衣ころもの袖を高くからげて、米搗こめつきから、粉挽こなひきから、俵の出し入れから、水門の上げ下ろしから、穀物の干場の仕事まで、与八を助けて、せっせと稼いで
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すると、米搗こめつきの男なんかが、もう私の心持を知っていて、その男が来ると、姉さん来ましたよと言ってからかうんです。からかわれてもこっちは何だかうれしいような気がしました
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
店屋の灯のあかりに透かしてみると、それはの為吉と米搗こめつきの藤助であるらしい。この二人が連れ立って湯屋へでも行くのかと見送っていると、不意に自分の袂をひく者がある。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
岩吉は平次の前に米搗こめつきバツタのやうなお辭儀をしました。
米搗こめつきはそのままにして、与八は自在の鉄瓶を下へ卸し、火を焚きつけにかかりました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
紙漉かみすき、元結、草履、繩細工、米搗こめつき、大工、左官、百姓、炭団たどん、などという職種があり、もっこ部屋の残された人足たちは、これらの仕事の助け役をするわけで、材料を船からおろしたり
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
岩吉は平次の前に米搗こめつきバッタのようなお辞儀をしました。
「ああ、何でもやるよ、畑つくりでも米搗こめつきでも一人前は楽にやるよ」
米搗こめつきにでも行くんですか」
「三蔵はん、このごろおいでやはったが、取廻しがよろしいので、なかなか評判ようおます、腕が器用とおっしゃいますが、あんた、あの片一方でな、米搗こめつきから、風呂焚き、流し、剃刀使いまでこまやかになさりますから、みんな感心しておりますのや」