筏師いかだし)” の例文
この場合彫と書いた方がふさわしいかも知れないが、それは、筏師いかだしがさすように筒に入れてとうを巻いたのを、与八は腰にさしています。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ川を下って来る筏師いかだしの話では、谷の奥の八幡平はちまんだいらと云う凹地くぼちに炭焼きの部落が五六軒あって、それからまた五十丁行ったどんづまりのかくだいらと云う所に
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
筏師いかだしらしい荒々しい男が、お三保を筏へ引きずり込み、急流を下へ流そうとしていた。しかし貝十郎の走って来るのを見ると、筏師と筏とは川下へ逃げた。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雪まだらな船が二三そう通って、筏師いかだしも筏へ下りて、ともづなを解き出した。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「飛んでもねえ、私は何も悪いことなんぞをする人間じゃあねえ、この通り、六郷下ろくごうくだりの氷川ひかわ筏師いかだしだよ」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
竜之助が万年橋のつめのところまで来かかると、ふと摺違すれちがったのが六郷下ろくごうくだりの筏師いかだしとも見える、旅のよそおいをした男で、振分けの荷を肩に、何か鼻歌をうたいながらやって来ましたが、竜之助の姿を見て